vol.02
阿久津 政英さん
阿久津農園(栃木県大田原市)
うちは実家が農家だったこともあり、大学を卒業してから農業に携わるようになって20年ほどになります。 お米づくりをやっていくなかで家族のアレルギーを改善したいという思いから、農薬を使わずお米をつくりたいという気持ちが強くなってきました。 農薬不使用栽培は草取りの大変さもあって父の理解を得るには時間がかかりましたが、小さい面積から少しずつ始めてだんだん認めてもらえるようになりました。
ゆうだいとの出会い
食味コンクールで他の生産者が栽培したゆうだい21が受賞しているのを見て、ゆうだい21の食味の良さというものに気づいて、地元栃木県で開発されたお米ということもあり、直感的にゆうだい21の可能性を感じて次の年からゆうだい21をつくることを決めました。
最初は3反歩※1を農薬不使用で栽培するところからスタートしました。現在では主食用のお米を4町歩※2つくっているなかで、ゆうだい21は2町5反歩、その中でも農薬不使用栽培のゆうだい21を5反歩栽培しています。
※1 1反歩 ≒ 10a
※2 1町歩 ≒ 1ha
他の品種との違い
他の品種との違いは、苗の段階から背丈が伸びやすい品種だと感じていて、育苗の段階から背丈が伸びすぎないように管理するようにしています。また、背丈だけでなく穂も大きく、稲の姿が名前の通り雄大な印象ですね。
収量は僕の作り方の場合、コシヒカリと大きく変わりません。これまで僕が栽培してきた他の品種と比べても収量は遜色ないと思います。
ゆうだい21のおいしさ
炊いてみるとやはり粒が大きく感じるのと、つやつやピカピカしていて見た目が綺麗という印象を受けました。
ゆうだい21自体が突然変異的に生まれた品種ということもあり、食べてみると他にはないゆうだい21ならではの独特な旨味があると感じています。
食べた方の評価は高く、ゆうだい21を食べてくれた方が美味しいと言ってくれて、年々お客様からの需要が増えてきていることから栽培面積を毎年拡大しています。1年目が3反歩、2年目が1町歩、3年目が1町5反歩、4年目の今年は2町5反歩と増やしています。
阿久津農園ならではの栽培の工夫
毎年新しいことを取り入れて工夫しています。植える時期を3回に分けたり、圃場に植える株数を変えたり、肥料設計を圃場ごとに変えたりしています。今年は無肥料での栽培も試しています。どんなふうにできるか毎年楽しみながら栽培しています。
植える時期を変えることで出穂の時期が変わってきます。出穂の時期に高温に当たらないことでなるべく遅い田植えを目指しています。遅く田植えをしたものは夏の暑さのピークを過ぎて気温が下がってくるあたりで出穂するので、暑さによるダメージを受けないということが最近分かってきました。食味計でも遅く植えたものは数値が高いという結果が出ています。
ゆうだい21の農薬不使用栽培
農薬不使用栽培で一番難しいところは雑草の除草作業です。除草の問題さえクリアしてしまえば農薬不使用だからといってそんなに難しいことはありません。その除草を可能にするために植え方を極端に疎植にして、縦横から除草できるように工夫しています。通常苗は1坪当たり50株植えるのですが、農薬不使用のゆうだい21では37株植えという植え方で、4割ほど減らしています。
また、当然除草剤は使わないのですが、その代わりに酵母菌や納豆菌、虫が嫌うレモングラスの抽出液などを散布して農薬不使用栽培を実現しています。
おいしいお米ができる環境
お米は夜に気温が下がったほうが美味しさの養分を吸い上げて穂に運ぶことができると言われています。
ここは山に囲まれた土地で標高は200mなのですが、この地理的な条件が日中と夜の温度差が大きい気象条件を作り出していることも味に影響していると思います。
また、近くに蛇尾川という伏流河川が流れていて、川の水を田んぼに引き込んでいます。ここから上流4kmほどは地面の下を流れているため水温が低い状態で田んぼに引き込むことができます。引き込んでいる水には川魚が混ざっていたりするんですよ(笑)。水温の低さと河原が近いことで夜温が下がりやすいというのも昼夜の寒暖差の大きさに影響しています。
さらに河川敷に位置するので通常の田んぼよりもミネラルが豊富で肥沃な土壌というのが美味しいお米づくりにつながっていると考えています。
1年目から高い評価を得たゆうだい21
つくり始めた1年目から全国米・食味分析鑑定コンクールの都道府県部門で金賞をいただきました。次の年には最上位部門である国際総合部門で特別優秀賞をいただいています。
3年目には静岡県主催のお米日本一コンクールで金賞をいただき、さらに4年目には全国食味コンクールの最高部門で金賞を受賞、東洋ライスさん主催の世界最高米の原料米に選ばれました。
全国から問い合わせが来るようになったり、有名な高級ホテルとの取引が始まったりと受賞したおかげでいろいろな方に食べていただけるようになってありがたく思います。
今ゆうだい21が知られてきて、うちのお米も全国に届けられるようになってきましたが、まだまだ認知度が低いところです。他とは違った美味しさがあるお米で、一度食べていただければその美味しさが分かってもらえると思いますので、ぜひ多くの方に食べていただき、もっとゆうだい21を知ってもらいたいと思っています。